介護の気持ち② 介護する人の本音

「産んでくれた、育ててくれた親だから」介護するのは当たり前と思われていた数十年前。

ところが初めて見ると、どうしたらいいかわからなかったり負担に感じたりすることが意外に多い「介護」の現状を見て戸惑うことが多いもの。

親の介護をがんばろうと思っていたのは束の間で、解放されたいと感じるときもあるのが、介護する人の本音です。

よく耳にするのが、介護している人のほうがストレスを感じやすいということかもしれません。

介護する人の気持ちも絶えず変化する

ひとりっ子の家庭ではもちろん、長男や長男の嫁は親の世話をして当然と考えられていました。
ときには、親の世話をする条件で嫁いできたというケースもあります。

そのためか、介護を始める前は私が高齢の親を「世話して当然」、「面倒を見るべき」と思っていた方も多いのでは。

介護に対して前向きだった気持ちが、徐々にもしくは突然介護から解放されたくなる……

これは普通のことです。

寝たきりであれ一定の世話だけで良い場合であれ、介護を受けている人の状況や気分も日毎に変化するもの。

介護している人に順応性があっても、毎日もしくはことあるごとに変わる人の世話をするのは、負担になることがあります。


個性も違えば、育ってきた環境やこのみも違います。
仕事をして会社で働いていても自営業であっても、仕事と介護の両立は簡単ではありません。
また、自分の親の世話か配偶者やパートナーの親、もしくは親戚など、介護を受ける人との関係もとても大きな溝があります。

さまざまな状況を考えると、高齢者の介護や世話をするのは普通のことと考えられてきましたが、

「介護される人」「介護する人」双方の状況を考えると簡単ではないのです。

介護する人の本音「介護しているとき」

「父親と特に親しい」、「母親とよく話す」など、成人してからも親と親しい関係を築いている人がたくさんいます。

こうした仲の良い親子や家庭で育った人であれば、なおさら「介護をしたい」と思うものです。

しかし、実際に親の介護をすることになったとき、状況が変わっていたという人もいます。

例えば、Nさん(女性)の場合。
結婚したときから、親の介護は自分の仕事になると思っていた女性のひとり。

義父の介護を始めたとき45歳で、片道50分の会社勤め。

1年間は「要介護1」で高齢者の世話をし、そのあと特養(特別養護老人ホーム)に入居するまで「要介護3」で8年間介護しました。

やっと入居できたと思ったら、その8ヶ月後義父が逝去。

義父の逝去から丸1年経過し、Nさんは特養のスタッフの方と再会。

Nさんは「特養のありがたさが身に染みました。1年前義父の世話を受け入れてもらえなかったら、私自身が壊れていたと思います」と語っています。

実はこのNさんの場合。
義父の介護を始めた(約9年前)とき、すでに自分の母親も70歳を超える高齢者でした。

自分の母親を先に介護したいと思っていたのですが、旦那さんの家族の状況ゆえに義父の世話をすることに。

しかし、それからの9年間、義父の介護と会社勤めのバランスが大変。

長女の大学と長男の高校入学があり、仕事を辞めるわけにもいかなかったのです。

旦那さんや子どもたちは、仕事をやめて介護をすることをすすめてくれました。でも、家計を考えれば退職後の不安や負担が目に見えていて、ボロボロになりながら介護と仕事を続けてきたようです。

「もう余力がなく限界と思ったときに、義父が特養に入居できました」と語るNさん。

「次男の嫁だから、義理の両親の世話は義理の姉(長男の嫁)がするものと思ってきた」

介護しているときには、何度も「なんで私が介護しているのかな」と思うことがあったといいます。

でも、義理の姉(長男の嫁)は別居中で義父の介護なんて持ってのほか。
すでに義母は逝去しているから、わたしたち(次男夫婦)がするしかないという状況だったのです。

大声出してストレス発散「叫びの壷」

介護を始めてみると「意外と大変」

Nさんを含め、最初の1年は睡眠時間もある程度確保できていいたという人も多いでしょう。
でも、これは極一部の人の意見。

初めから、もしくは数ヶ月数年後には睡眠時間も家事をする時間も取れない状態という介護をする人もいます。

旦那さんや子どもたちの協力や介護系サービスを受けられなければ、介護する人が壊れてしまうと思うことも多いでしょう。

前述のNさんに「介護の時間の中で何が一番大変か」と尋ねると、

始めての介護が義父だったこと
勤務先との両立
・介護事態何が必要かわからなかったこと


過酷な状況とはいいたくなくても、介護って意外と大変

というのが介護中の本音だといいます。

介護を受けている人にはわかってもらいたいけど、絶対に口にはしなかった「介護から解放されたい」という気持ち。

言葉にせずに済んだのは、義父や旦那さんの「ありがとう」という言葉
「感謝され」「感謝する」のは、気持ちや生き方を支える上で大切なことなのです。

感謝の気持ちの大切さを改めて実感したのは介護から解放された後のNさんの一言。

「自分の母親も間もなく80歳。
自分の母親の介護は、もっと上手にできるかも知れないと思っています」

介護とは 「充実した仕事」

両親や義理の親の世話は「絶対にしたい」と思っていても、介護をしているときの状況は想定外ということもあるのです。

そのため、介護をしているときには、高齢者の世話が重労働に思えるというのは介護する人の本心といえます。

Nさんの経験からも分かるように、介護は大変なこと。

過酷な重労働に見えるかも知れません。

実際に「重労働」なことが多いでしょう。

では、介護とは「充実した仕事」 VS 「過酷な重労働」のどちらでしょうか。

でも、9年間の介護をする生活から解放されたNさんのように、次の介護は「もっと上手にできるかも」と言えるのは素晴らしいこと。

本当の「愛」や「親切」を感じるという人が少なくありません。

古い本には、「受けるより与える方が幸福である」と書かれています。
つまり、介護することが充実した仕事に思えることもあるのです。

介護する人の本音「介護の不安が解消されたら」

「充実感があってもやっぱり大変だった」というNさんも、仲の良い自分の母親の世話はやはり「自分でしたい」といっていますね。

このNさんの話は、2010年に語られたもの。

この時点で母親の介護はまだ始まっていませんでしたが、介護する頃には定年間近の50代後半になるので不安もあるはず。

ところが、最近では寿命が伸びて「人生100年時代」と呼ばれています。

そのため、Nさんを含め、介護を考えている人にはさまざまな不安が発生するでしょう。

親の介護をするころに、自分の世話や介護が必要になっていたらと思うことがあるのです。

それでも、Nさんの体験は現実の問題。
複数の人が同じ思いや体験を持っているかもしれません。

近年では、介護のためのさまざまな行政によるサポート体制が整い始めました。
また、以前よりも改善されたシステムも多くあります。

とはいえ、どんなサポートがあってどんなシステムを使えるか、それが自分自身の環境にぴったりと会うのかなど、知りたいこと調べたいことはたくさんありますよね。

また、「介護が負担に思う」ときでは、すでに本音があまり言えない状況になっていることも。

そんなときこそ、気持ちを切り替えたりリラックスしたりすることは必要不可欠です。

ロード・オブ・ザ・シニアの「介護の本音」はそんな気持ちから生まれました。

次回は、介護の本音③使ってみたい介護システムを紹介します。

投稿者: betterjapan

「高齢者を支えているつもりが、高齢者から励まされていた」という経験から始まった私たちのブログ「シニアの悩み」。 まだまだ働ける70代のシニアと定年間近の50代が、それぞれの立場から伝えたいことをブログにしてきました。 2020年を皮切りにさまざまなブログをひとつのサイトから発信しています。老後プランにおすすめの実体験からの情報も掲載中!ぜひお越しください。

介護の気持ち② 介護する人の本音」への1件のフィードバック

  1. いいね、高齢者の福祉は課題も多いし、深刻な問題だと思います。これからも記事を沢山書いてください。

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